小金井歯科医師会

生態学的プラーク仮説って?

【令和5年5月号】
小金井歯科医師会 / 松本 亨

 細菌の塊であるプラーク(歯垢)の中にいるむし歯菌を主とした酸を出す細菌(酸産生菌)が、糖を取り込んで出す酸によってpHが下がり歯が溶けることを脱灰(だっかい)と言います。そしてpHが中性に戻ると歯の修復(再石灰化)が始まります。

 歯は脱灰と再石灰化の繰り返しでバランスを取っているので、糖を回数多く摂取することにより、pHが低い時間が長くなることで脱灰が進み、中性の時間が短いつまり再石灰化の時間が短いことでむし歯は進行していきます。なので、朝昼晩の三食の他は間食一回以内が推奨されています。

 糖の頻回摂取による影響は実はそれだけではないと最近では言われてきています。それが「生態学的プラーク仮説」です。

 プラークは酸産生菌だけでなく何百種類もの細菌がいます。

 糖を取り込んだむし歯菌が酸を出すことでプラーク全体が酸化する。むし歯菌らにとっても酸性という環境は過酷で力が弱まります。が、糖の頻回摂取によりむし歯菌が次第に改造され酸に強くなり元気よく(?)酸を出すようになります。またむし歯菌以外の酸産生菌も同様に強化されていきます。そして逆にプラーク内の酸に強くない細菌は減り、プラーク内における酸産生菌の割合が増えていき、むし歯リスクが増強されていくと考えられています。

 もちろんそれ以外にもむし歯を作りにくくするために糖分を控える、よく咬んでだ液を出す、フッ化物を効果的に使うといった事が重要です。