小金井歯科医師会

健全な咀嚼は脳の健康を保つ

【平成30年5月号】
小金井歯科医師会 / 古田 昭彦

 「ガムをかむと良い。口を動かすと良い」、皆さんが耳にする言葉だと思います。 この事実を説明できる科学的なエビデンス(証拠)は分かっていません。 間違いなく脳が咀嚼をコントロール、咀嚼が脳に影響します。咀嚼はかむだけでなく、かむ事と関連した要素が含まれます。

 ヒトは加齢による生理的な脳機能の衰えがあります。 年をとると肌の張りがなくなり、筋力が衰えてくるのと同じ現象です。 脳も体の一部、加齢による変化は避けられません。 若いころに比べて脳の能力も落ちてくる、これは自然な変化であって決して認知症ではありません。

 加齢による脳機能の衰えに対して、重要な事は脳を使う(活動させる)と言う極めて単純な事です。 人間の脳は3層構造です。深い所から脳幹(生命維持)、大脳辺縁系(喜怒哀楽と言う心の動き)、新皮質(理性を司る)に分類されます。 咀嚼はこの新皮質を覚せいさせます。咀嚼の神経は三叉神経で、この神経にはあごを動かす信号を筋肉に伝える役割と口腔内からの情報を脳に伝える役割です。 そして新皮質に対する一番の効果は、うまくかめて食事ができる事、「食べる」楽しさを感じ取れる事にあるようです。嬉しい、楽しいは大脳辺縁系の機能です。

 咀嚼に支障のない生活は新皮質を働かせ、脳を健やかに保つ事につながるようです。 その為にも歯科診療(口腔リハビリテーション)が高齢化社会の支えになると考えられています。