小金井歯科医師会

口腔(くう)癌(がん)と日常生活

【平成17年11月01日号】
東京都小金井歯科医師会 / 古田 昭彦

皆さんは、癌(がん)という文字や言葉を見たり聞いたりすることが最近増えたと思いませんか。先日も相撲界で有名な若貴兄弟の父親、二子山親方も残念ながら、口腔底癌(がん)に罹り患してしまい若くして亡くなりました。病気よりも若貴兄弟の確執がワイドショーで、連日取り上げられたことを覚えていられるでしょうか。

日本における癌死亡者数は平成14年の年間死亡者数約98.2万人のうち約30.5万人で、死因の約31%を占め死亡原因の第1位であります。口腔領域にできる癌による死亡者数は5千337人で、すべての癌死亡者数の約1.8%程度であります。それほど大きな数字ではないので怖がる必要はありませんが、確実な知識を覚えていることも無駄にならないと思います。

そもそも口腔は、口蓋(がい)(上の顎(あご)の裏)・頬(きょう)粘膜・上下の口唇(こうしん)・歯肉・舌・口腔底(舌の下側)・歯などで構成されています。その中で歯を除く構成部位は柔らかい皮のようなもので被われています。この皮を「粘膜」と呼びます。口腔の「粘膜」はどこも、「重層扁(へん)平上皮」で作られています。

今回のテーマの口腔癌は、まさしく口腔内を被覆する「重層扁平上皮」から発生するもの、「粘膜」の下の組織、例えば血管、線維成分、脂肪などから発生するもの、唾液腺から発生するものに分類することができます。そして口腔内を被覆する「重層扁平上皮」から発生する癌を「扁平上皮癌」と呼び、口腔領域に発生する癌の80~90%を占めるといわれています。口腔にできる癌の原因として①タバコ(煙中の発癌物質が作用して細胞を傷つける)②アルコール(口の中の脂質を剥(はぎ)取るため、化学物質が進入しやすくなる)③放置したう歯(虫歯)鋭利な部位により、舌や頬粘膜が傷つく場合④不適合義歯や金属冠⑤清掃状態不良など、以上5つほどです。特に①と②の相乗作用が心配されます。③~⑤については歯科診察を受けることにより十分解決すると思われています。癌についての若干、怖い話でしたが、日ごろから歯科医院で定期検診を受診し、異常があれば早期に検査をすることをお勧めします。