小金井歯科医師会

よく噛んでいますか

【平成12年11月05日号】
東京都小金井歯科医師会 / 浅野 和歌子

食べ物のおいしい季節です。豊かな食生活は、「質の高い生活」の基本です。食べたい物も歯が悪いために食べられない不自由さは、苦痛であるばかりか、食事の偏りは栄養学的にも好ましい事ではありません。事実、噛み合わせが悪い状態が長く続くと、健康そのものにも影響してきます。

噛む運動の刺激が、顎の関節や、その回りの筋肉などの感覚受容器に情報を送ります。それが大脳皮質を刺激して、脳幹に伝わって脳の活動を活発にきせるのです。

よく噛む事でどんないい事があるか、学校食事研究会が面白いキャッチフレーズを考えました。

ひ一肥満防止
み-味覚の発達
こ一言葉の発音がはっきり
のー脳の発達
はー歯の病気予防
がーガン予防
い一胃腸の働きを促進
ぜー全身の体力向上と全力投球

これらの頭文字を並べると、「ひみこの歯がいーぜ」となります。

よく噛む事は、健康増進につながります。入れ歯を入れて噛めるようになったら、痴ほう症状態が軽減したという報告もあります。

ところで、皆さんはよく噛めていますか?ごく初期のむし歯だったら回復する事もありますが、穴が開いてしまったむし歯は自然に回復する事はありません。早めに治療をしましょう。不幸にして歯を失った場合は、適切な補綴処置が必要です。また、むし歯と同様、歯を失う原因の一つに、多くの人がかかる病気として歯周病があります。自覚症状が少ないために、自分では気がつかないうちに進行してしまう恐ろしい病気です。

むし歯や歯周病といった病気の特徴は、そのまま放置すると徐々にですが確実に進行してしまう病気で、元に戻りにくい蓄積的なものだという事です。蓄積されたむし歯や歯周病がある限界に達すると、ついに歯の喪失という最悪の結果をもたらしてしまいます。豊かで健康的な生活を生涯にわたって確保していこうとするとき、この蓄積的な病気に対しては、乳児期から老年期まで連続した長い目と心がけで、予防と治療に取り組む事が最も大切です。このことこそが、生涯を通した歯および口腔の健康維持への王道である事は間違いありません。

規則正しい生活と
飲食習慣
しっかりと正しい歯磨き、定期的な歯科健康診断を心がけて、豊かで健康的な生活を送っていただきたいと思います。