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歯の健康メモ
外傷性の歯牙脱臼について
【平成11年11月20日号】
東京都小金井歯科医師会 / 吉澤 寿雄

表題が何か難しそうに見えますが、優しく言えば、
「歯を何かにぶつけてしまって、抜けてしまう」
ということです。このような事故は、他人ごとのように思われますが、実は私たち歯科医師にとって、年に数例は経験していることなのです。物の弾みというたとえがありますが、想像以上に小さな力で一瞬のうちに前歯が抜けてしまうことが起きます。当事者にとっては、何が起きたのか理解できない場合すらあります。歯が折れてしまったと思って来院された方も何人かいらっしやいました。いずれにしろ気が動転されていることは確かです。

ここで、歯があごの骨にどのように植わっているか、その構造を簡単にご説明いたします。歯が植わっているところを、歯の支持組織と申しますが、この支持組織は、歯槽骨(しそうこつ)、セメント質、歯根膜、という三つから成り立っています。歯槽骨は、あごの骨の歯の植わっているところ。セメント質は、歯の根の表面。歯根膜は、歯槽骨とセメント質の間にある繊維性の膜です。この歯根膜が歯をしっかりと歯槽骨に結び付けているのです。つまり歯が抜けるということは、歯根膜が完全に断裂し、歯槽骨から歯が離れてしまうということです。

いろいろと説明してまいりましたが、それでは患者さんは何をすればよいのか、そして歯科医はどのような治療をするのかを、申し上げます。抜けてしまった歯が口の中にないときには、速やかに床なり地面なりを見て歯を捜してください。思いがけないところまで飛んでいってしまうこともあります。見つけた歯は、理想を言えば生理食塩水につけ、冷やして持ってきていただければ最高ですが事情が事情ですから当然のようなことはできないと思います。なぜこのようなことを言いたかというと、歯根膜の損傷が小さければ、小さいぼど、歯牙再植の成績がよろしいからです。現実には乾燥させないように濡れた綺麗(きれい)なハンカチなどに包んで持ってこられたらよろしいかと思います。

治療方法は、感染予防を図り歯根膜の損傷軽減を図りながら、歯を元の位置に戻し、固定し、安静を保つという治療です。つまり歯根膜の再生を促すことです。歯根膜の損傷が大きいときは、歯槽骨とセメント質が骨製癒着を生じ、歯根の吸収、脱落が数年で起きてしまいます。また歯槽骨の骨折などがあると、うまく再植できません。

遊具からの転落、自転車での転倒、ふざけていて友達の手や、肘(ひじ)、膝(ひざ)がぶつかる、けんか等々……皆さんくれぐれもお気を付けください。